酒神バッカス

ギリシア守護神 ディオニュソス(Dionysos)が、ローマに入り、ローマ神話においては、バッカス(Bacchus)と呼ばれるようになります。

マーカー神々の概略

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◆ギリシアの酒神、萄酒と享楽の神ディオニュソスは、大神ゼウスが正妻ヘラの目を盗んで、テーバイの王女セメレとの間に作った子供であることから、ヘラの敵意の対象となり、一時は気を狂わされて各地を放浪することにさえもなります。その後ディオニュソスは、女神レアによって癒やされ、その際に秘教の祭礼の仕方を授けられます。また、ブドウの栽培と酒造りの手法を身につけたことから次第に力を持ち、ついには、ギリシア全土に彼を奉る神殿が建てられるようになるのでした。無秩序と享楽を司るディオニュソス神はしばしばその性質から他の神々よりも驚異的に扱われ、この神の信仰を禁じる土地もあった程でした。
◆ギリシアにおいて、雄山羊は雄羊と並び、権力者の表象でありました。この神的存在と相対する悪の化身として、葡萄酒と享楽の神ディオニュソスの従者とも養育係ともいわれる、森の精サテュロスは、半身半獣の姿でニンフたちと享楽的にたわむれる様などが描かれるようになり、さらに、ギリシア神話に登場する半人半獣には、森や野山、田園を司る牧神パンがおり、毛むくじゃらでやはり山羊に似た二本の角を頭に生やしています。パンの息子シレノスは、ディオニュソスに葡萄の秘密を教え、2人は世の人々に葡萄栽培を教えていきます。バッケーと呼ばれる信者が葡萄酒に酔い享楽の舞を踊りながら彼らの後をついて回ったのでした。ディオニュソスの軍隊では、彼自身が中央に、その右翼をシレノスが、左翼をパンが指揮し、サテュロスたちは連隊長だったともいわれています。
◆ディオニュソス信仰は、ローマ・カソリック教会から悪魔崇拝であるという非難を受けるようになり、バフォメットをはじめとする偶像崇拝を実践していたテンプル騎士団などは異端としての弾圧され、1312年、教皇勅令により解散に追い込まれています。


酒神バッカス(1510-1515)

「美しい巻き毛、たくましい身体にまとった毛皮、両性具有的な微笑み。。(図解「ダ・ヴィンチの謎」田辺清監修/宝島社より) いかにも、ダ・ヴィンチ好み」であると、と伝えられています。何とも色男と言いましょうか、この男性が好色そうなのか? 確かな肉体美とヒョウ柄のようにも見える装いは、今時の人にとってもセクシャル度高め。野性的なお色気を感じさせる絵です。
実際、この絵はレオナルドの弟子たちによって、下記の絵「ヨハネの洗礼」を参考に、完成されたと伝えられています。例えばそれは背景の北方ルネッサンス的な作法などからの判断であるとのこと。。確かに、少々通俗的なバッカスが強調され過ぎているようにも感じられます。レオナルドとは、こんなに解りやすい絵を描いてきた画家ではなかったような。
「酒神バッカス」は、この絵の要するにコピーだろうということで、あまり取り上げられなかったりもするのが現状。


洗礼者ヨハネ (1514-1516)

こちらでも毛皮をまとっているとのこと。そして、右手の十字架から、これを洗礼者ヨハネのアトリビュートと解釈した専門家により「ヨハネであろう」と考えられている作品だというのが正確なところです。
そうして、掟破りの表現力がここには発揮されています。畏れ多くもイエスに洗礼をほどこした聖人ヨハネを、何故にここまで艶っぽく描く必要があるのだろう? おそらく信心深いクリスチャンにとっては目の当たりにしたくない絵かもしれません。
一般の私たちにとっては何故かしかし、惹きつけられる。この妙な印象は、あの「モナ・リザ」に重なる瞳、目元の印象なのでしょうか?
レオナルドの生涯の後期、ローマもしくはフランス在住の頃の作品と推定されているが、依然として経歴不明とのこと。